テレワークのメリットとデメリットを労働者と企業別に解説
テレワークという働き方が最初に注目されたのは、2007年まで遡ります。
同年に「テレワーク人口倍増アクションプラン(2007年5月策定)」が発表され、2010年までに2005年対比でテレワーク人口の倍増を実現することが掲げられていました。
しかしその結果は目標通りにはいきませんでした。
それでもテレワークという働き方は早く日本で推進していかなければなりません。
その理由は「少子高齢化」です。
日本は世界一の高齢化社会と言われており、2020年3月時点で日本の人口の約30%程が65歳以上という状況です。そして今後さらに少子高齢化は進んでいくと言われております。
それにより「育児や介護」と「仕事」の両立というのが今後のテーマになってくると思います。
高齢化によって労働人口を減らさない為にも「介護と仕事を両立できる環境」や「育児をしながらでも働ける環境」を整えていく必要があるでしょう。
そのために「テレワーク」という働き方が一つのカギになるのではないかと思います。
今回はそのテレワークのメリットとデメリットを労働者と企業それぞれで紹介していきます。
テレワークのメリットとデメリット_労働者編
一見、労働者目線で考えるとテレワークはメリットばかりと思えるかもしれませんが、意外とそんなことはありません。
テレワークをするのであれば労働者自身も気つけなければならないことがたくさんあります。
それでは早速、労働者がテレワークをするメリットとデメリットを紹介します。
労働者がテレワークをするメリット
労働者がテレワークをするメリットは5つです。
- 通勤時間の削減
- 育児や介護、家事との両立
- ワークライフバランスの向上
- 職場の選択肢が広がる
- ストレスの削減
それではそれぞれ見てきましょう。
通勤時間の削減
通勤時間の削減は、テレワークにおいて多くの方が真っ先に思い浮かぶメリットではないかと思います。
テレワークであれば出社する必要が無いため通勤時間は発生しません。その分の時間を別のものに使うことが出来ますし、早めに仕事をスタートさせるなど柔軟に活用できるようになります。
また電車やバスなどの公共乗り物であれば遅延など発生することもありますが、そのようなリスクに巻き込まれることもありません。また車出勤であれば渋滞に巻き込まれる心配もありません。
通勤が無くなることであらゆるメリットがあります。
育児や介護との両立
これまでは折角就労意欲があるものの育児や介護をせざるを得なくなった場合、仕事を辞めるという選択肢を取っていた方も多いと思います。
しかしテレワークが導入されれば、フルタイムとまではいかないにしても育児や介護の空き時間に仕事をする事が出来ます。
今後の日本を考えると「育児や介護と仕事の両立」は重要事項です。そしてそれはテレワークという働き方によって実現でるようになります。
ワークライフバランスの向上
テレワークによって通勤時間が無くなります。またスマートフォンをいじったり同僚と話していただけの休憩時間中に家事をこなすことも可能です。
それにより家族と過ごす時間や趣味に費やす時間などより多くの時間が確保できるようになります。
今では企業自体でもワークライフバランスを重要視する傾向にあったり、プライベートの時間をもっと確保したいと考える労働者も増えているのでそのためにもテレワークは最適でしょう。
職場の選択肢が広がる
就職や転職をする際の企業選びで、就業場所を気にする方も多いと思います。
しかしテレワークという働き方が出来れば、企業の場所関係なく職場を選ぶことが出来ます。
良い企業があれば県外の企業に就職することも可能ですし、極端な話海外在住で日本の企業に就職することも可能でしょう。
自身のキャリアアップのためにも場所に囚われず職場の選択肢が広がることはかなり大きなメリットになると思います。
ストレスの軽減
テレワークが出来れば、通勤時の満員電車から解放され渋滞に巻き込まれることもありません。服装も自由なのでスーツを着る必要もなければ革靴やパンプスを履く必要もありません。
これらによって発生していたストレスから解放されれば、少しばかりは生産性の向上にも繋がるのではないかと思います。
労働者がテレワークをするデメリット
労働者がテレワークをするデメリットはこの5つです。
- レスポンスの時間がかかる
- 時間の管理が難しい
- 運動不足
- 勤務態度や仕事ぶりによる評価がされなくなる
- 自己規制が必要
ではそれぞれ紹介していきます。
レスポンスの時間がかかる
テレワークになるとこれまで近くに居た同僚や上司はいません。そのため分からないことがあった時や相談時などすぐに返答をもらえるとは限りません。
それによりストレスを抱える人もいるでしょう。
ただ一度自身で考える・調べるという自主性が養えますし、文章での伝え方の向上になるというプラスの面もあるのではないかとも思います。
時間の管理が難しい
テレワークとして家で働く場合、仕事のON/OFFの切り替えが難しいです。そのため長期時間労働が発生する可能性があります。
そのため「何時までにこの仕事を終わらす」などタスク管理を行い時間を自身でコントロールしていく必要があります。
運動不足
意外と出勤していると歩いています。それがテレワークになるとほとんど歩かないといったケースにもなりかねません。
そのため時間の余裕が出来る分、散歩をしたりなど運動をする事を心がける必要があるでしょう。
勤務態度や仕事ぶりによる評価がされなくなる
評価をしてくれる上司が近くに居なくなるため、進捗状況や成果物・結果でしか仕事の評価がされなくなります。
これが本来あるべき姿な気はしますが、遅くまで頑張っていたり必死に仕事をしている姿で評価してもらっていた労働者にとってはデメリットとなりえるでしょう。
自己規制が必要
家にはテレビや漫画などがある人も多いと思います。ついついテレビを見てしまう可能性もあります。
テレワークと言っても仕事をしなければならないので、仕事中はそのような欲は無くして自己規制をする必要があります。
テレワークのメリットとデメリット_企業編
続いて企業がテレワークを導入する場合のメリットとデメリットを紹介していきます。
企業がテレワークを導入するメリット
企業がテレワークを導入するメリットはこの5つです。
- 生産性の向上
- コスト削減
- 優秀な人材の確保
- 離職防止
- 事業の継続性を高める
それぞれ紹介していきます。
生産性の向上
実際に総務省が調査したデータ(平成30年版 情報通信白書|テレワークによる働きやすい職場の実現)によると、生産性向上を目的としてテレワークを導入して効果があったと認識している企業が多いようです。
満員電車に乗るストレスの開放や通勤時間の削減などによる生活面での質の向上をさせることで、労働者のパフォーマンス向上を後押しすることが出来ます。
またテレワークにすることは、仕事の役割分担や切り分け・納期などを明確にしていかなければ到底実現することは出来ません。そして進捗確認など頻繁に行う必要があるでしょうし、それらを持って人事評価されるようになります。
そのためテレワークを導入することで生産性を向上させることが出来ます。
ただ十分な事前準備がなされていない状態で安易にテレワークを導入してしまうと生産性が低下するリスクはあるでしょう。
コスト削減
テレワークを導入することでオフィスの縮小や廃止、それに伴う光熱費の削減が出来ます。また従業員の通勤費や出張費用も削減出来ますし、ペーパーレス化による紙やインク、印刷代も削減することが出来ます。
このようにあらゆる面でコストの削減をすることが出来ます。
優秀な人材の確保
出社が必須であれば獲得できる人材もその居住地に影響されます。しかしテレワークであれば人材の住んでいる場所に囚われず採用することが出来ます。
極端な話、海外に住んでいる優秀な人材を採用することもテレワークであれば実現できるでしょう。
また企業のイメージアップにも繋がるためより採用がしやすい環境になります。
離職防止
介護や育児によって働けなくなる従業員もテレワークがあれば離職させずに継続して働いてもらうことが出来ます。
また従業員に対し通勤といったストレスを与えることもなく、ワークライフバランスを向上させることが出来るので、不満が少なくなります。
それによる離職も防止することが出来るでしょう。
事業の継続性を高める
台風や地震などと言った災害時やコロナウイルスのパンデミックなどの非常事態時により事業の継続が難しい場合でもテレワークであれば出社することなく仕事が出来るため、継続しやすい環境・組織を作ることが出来ます。
それにより利益の損失を軽減する事が出来ます。
企業がテレワークを導入するデメリット
企業がテレワークを導入するデメリットはこの4つです。
- 情報漏洩のリスク
- 労働時間の管理
- 初期コストの発生
- テレワーク出来る従業員と出来ない従業員で不公平さが生じる
ではそれぞれ紹介していきます。
情報漏洩のリスク
テレワークで自宅以外で働く場合、公共の無料Wi-fiの使用や覗き見などにより情報が漏洩するリスクがあります。
そのため事前に無料Wi-fiの使用を原則禁止したり、覗き見対策としてスクリーンフィルターを支給したりと言った対策が必要になります。
またその他通信を暗号化させるためにVPNを活用したり、端末やグループウェア・クラウドサービスにログインする際に「多要素認証」を導入するなどしセキュリティ対策をしていく必要があります。
労働時間の管理
テレワークでは働いている姿が見えない為、本当に働いているのかの確認が難しいです。また従業員の長期労働やサービス残業に繋がる可能性もあります。
怠慢や働きすぎを防止するためにもツールを導入する選択もありますし、都度進捗管理を行い仕事状況を把握するなどの対策が必要となります。
初期コストの発生
まずセキュリティ面での対策をするためにコストが発生します。またデスクトップ型のPCを使用している従業員にはノートPCを支給したり、カメラ付きのノートPCが必要になったりと初期コストが発生します。
ただセキュリティ面ではテレワークに限らずすべき対策ではあると思いますし、将来的に削減できるコストを考えれば大きなデメリットとは言えないでしょう。
ただ自転車操業に近い企業もあるため、国としてテレワークを進める上での投資は必要になるかもしれません。
テレワーク出来る従業員と出来ない従業員で不公平さが生じる
企業によってはテレワークが出来ない従業員もいると思います。そうなった時不公平さを感じる人も出てくると思います。
もちろん全員がテレワークを出来る環境を構築することがベストですが、それが難しい場合もあると思います。
そのため「テレワークをすることで生産性が向上する」という意識づけを企業として従業員にしていく必要があります。
不満が出る理由としては「通勤しなくてよい」などの部分のみをとらえて「楽をしている」と感じるからだと思います。
それを取り除くための対応が企業として必要になるでしょう。
おさらい
テレワークを導入するメリットとデメリットを労働者視点と企業視点で紹介してきました。
最後にそれらをおさらいしていきましょう。
■労働者がテレワークをするメリット
- 通勤時間の削減
- 育児や介護、家事との両立
- ワークライフバランスの向上
- 職場の選択肢が広がる
- ストレスの削減
■ 労働者がテレワークをするデメリット
- レスポンスの時間がかかる
- 時間の管理が難しい
- 運動不足
- 勤務態度や仕事ぶりによる評価がされなくなる
- 自己規制が必要
■企業がテレワークを導入するメリット
- 生産性の向上
- コスト削減
- 優秀な人材の確保
- 離職防止
- 事業の継続性を高める
■企業がテレワークを導入するデメリット
- 情報漏洩のリスク
- 労働時間の管理
- 初期コストの発生
- テレワーク出来る従業員と出来ない従業員で不公平さが生じる
コロナウイルスの影響が強まっている時だからこそ、従業員の身を守るためにもテレワークの促進は行っていく必要があります。
そしてそれをバックアップできる体制を国として行っていくべきでしょう。
日本でテレワークがなかなか促進されない5つの理由
コロナウイルスの影響によりテレワークという働き方が注目されており、多くの企業でこれを機に導入されている印象にありますが、まだまだほんの一部であり多くの人が出勤して仕事をしています。ではなぜ日本でテレワークが促進されないのか?日本の企業や社会の考え方を元に解説していきます。